

- 岩波書店
- 発行:1964/01-1974/01
- ISBN:4-00-322192-3
- 文庫 / 405 p
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「銅版画」「閑日」「竈の秋」「トビアス」「青金石」の4篇よりなる。
深夜営業の画廊で「わたし」はかつて何かの本の挿絵に使われた3葉の銅版画に出会う。
その版画の意味する所を店主と話合うのだが、次なる物語はその謎を追跡するかのように綴られて行く。
中世風の貴族の館を舞台にした「閑日」「竈の秋」がメインになっている風であるが、 一転「トビアス」で日本の片田舎の女系家族の家が舞台になる。
最後には聖フランチェスコの物語へ。

ラピスラズリと言うより深い色の翡翠を思わせる美しいクロスの装丁をめくる。
紙の手触りも厚くなめらか。 お気軽で、その分ぞんざいに扱い易い本が多い中、読む前から丁寧に読もうとしゃんとした気分になる。
いづれもが生きながらある季節を仮死状態で過ごす(冬眠する)者、 亡霊や実際の死に直面する者たちが描かれており、そして人形も登場する。
凝った背景描写の中に常に死と蘇生が隣り合わせに存在する不思議な連作。
痘瘡が蔓延し、枯れ葉で薫蒸する~疫病との関連~更に「トビアス」という名は全くもってそこに登場する者の名であるし、最後の「青金石」では「名も無い者」が眠りから覚めた時に見た天上の金青石の空から天使が降りてきた件など、旧約聖書の『トビト記』を朧気ながら意識しているのだろうか。
全てのパートを読み終わったあと、ひとつの結末へ集約されるといった形式のものではなく、まさに何葉かの版画でも眺めているといった雰囲気である。
しかし、何事か触発される。
残り香の行方を追跡したくなるような…。
久しぶりに読んだ(当然日本語で書かれた)日本の作家の文章だった訳だが、日本語の持つ語感の美しさを再認識。 |