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山室 静 Yamamuro shizuka

1906年12月15日 - 2000年3月23日。鳥取県生まれ、長野県佐久市出身。詩人、文芸評論家・翻訳家。
1927年岩波書店入社、東洋大学夜間部、日本大学夜間部に通ったのち、39年阿部次郎を慕って東北帝国大学法文学部(現東北大学文学部)美学科に入学。 1932年25歳の時、プロレタリア科学研究所に属し、1933年逮捕拘留され、その後も2度留置されるなど弾圧を受ける。
北欧文学・神話についての数々の著作や今では誰でも知っているアンデルセン、リンドグレーン、トーベ・ヤンソンなど北欧の児童文学作家の翻訳書を多く残す。 また、アイスランドを訪問して同国のノーベル賞作家ハルドル・ラクスネスと会見したこともあり、彼の作品の翻訳も試みた。 エッダやサガなどのアイスランド古典文学の日本への紹介の先駆者である。文化学院、日本女子大学などで教鞭も執った。

サガとエッダの世界

STORY

 北欧で生まれたオーディンを主神とする神話。この神話や『ニーベルンゲンの歌』の元となった伝説やベーオウルフのような北欧の文化が何故、西の果てのブリテン島へ辿り着くことになったのか…。  またアイスランドにはサガやエッダが大陸より残されているというが、何故この厳寒の孤島で北欧文学が開花し、残されたのか…。
ユトランド半島のバイキングの拡散のルート、文化の痕跡を平易な文章と図版によってゲルマン人の信仰と文化が紹介されている。
単に歴史の入門書にとどまらず、まるで物語を読んでいるように惹きこまれる著者の筆力を味わうこともできる。


REVIEW

ムーミンの翻訳など、早くから北欧文学を日本に紹介した山室静さんの本。
昔、何故イギリスに残る叙事詩が北欧の神話や英雄を取り上げ、その舞台も北欧であるのか疑問に思っていたいた頃、この本と出会った。

ユトランド半島のバイキングたちがその土地を去り、移り住んだだけでなく、更なる転地を求めて西へと移動するいわば中継地点のような役割を果たしたアイスランド。だが中継地点といっても、この土地で本国よりも北欧文学が開花し、その資料が地理的影響も手伝って残存している。
英国文学には北欧神話や民族的な影響が色濃く影を落としているが、このゲルマン人の移動によるものであることが窺い知ることができる。

極北の海を航海し、辿り着いた島、アイスランド。厳しい航海と開拓の生活に思いを馳せると、それだけで数多くの物語が生まれるのに十分であったたに違いない。故郷への思いや信仰、そして新天地で多くの歌謡が語り継がれた。
ギャオと呼ばれる地球の裂け目にあるこの島は、ホットスポット上に存在する火山島であり、暖流が島を取り囲むように流れている。このため、ユトランド半島での生活よりは想像よりは遥かに暮らし易く、暖かだっただろう。この地で文化が一斉に開花したするに足る下地はこうした地理的・気候的条件によってもたらされたと言えるかもしれない。サガやエッダが孤島であるが故に散在することなく残る。
更に領土を求め西へと移動し、ブリテン島に到着し、そこでまた新たな歴史が刻まれ、民族と文化の融合が始まる。

ゲルマン人の気質にも触れ、民族が拡大し、また融合していく過程も平易な文章で、地図や系図も掲載され(ファンタジー好きはたまらないでしょ?でもこれ想像上のものでないところが凄いよね♪)ているので非常に理解しやすい。

既に元版は存在しないので入手が困難だが、ユーズドでよく出回っているし、ODで版元を文元社に変えて発行されている。 こちらは少々お高くなっているが、北欧文化や文学だけでなく、英文学に興味を持たれる方にも是非おすすめ。

  • サガとエッダの世界―アイスランドの歴史と文化 (現代教養文庫)
  • サガとエッダの世界―アイスランドの歴史と文化 (教養ワイドコレクション (048))

社会思想社
発行:1964/01/-1974/01
ISBN:4-309-11441-7
文庫/258p

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