© Fantasia Lab. All Rights Reserved.
<<Back

H. G. ウェルズ  Herbert George Wells

1866年9月21日 - 1946年8月13日
イギリス、SF作家。
イングランドケント州ブロムリーの商人の家に生まれる。
ジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれる。歴史家としても、多くの業績を遺した。

モロー博士の島 |

 モロー博士の島

The Island of Doctor Moreau (1896)
モロー博士の島

The Island of Doctor Moreau (Unabridged Classics)

海で遭難したプレンディックは一隻の貨物船に拾われる。
その船にはモンゴメリーという胡散臭い男と奇異な人物が乗り込み、各種の動物が載積されていた。

辿り着いた先は地図にも載っていない絶海の孤島。
そこは十数年前に消息を絶った天才科学者モローの実験島であった。
モロー博士はその島で獣を改造し、新種の人間を創造することに没頭していた。
島に放たれた奇怪な獣人たちが動物としての本能と理性に引き裂かれながら、次第に社会というものを作り始めるのだが。

「マッドサイエンティスト」ものの古典的名著。
巻末に詳細なウェルズSF作品邦訳書誌を収録。


実際の時間の経過によって予見や想像が裏切られるのはSFの宿命でもある。この本が出版されたのは未だ遺伝子というのもが見つかるずっと以前の19世紀。
当然分子生物学を知る我々には接木のように個体部位を別種に移植することで別な生物に生まれ変わらせるなど笑い話にもならないことを知っている。
野蛮で荒削りな生命科学の悲劇を物語であれば、フランケンシュタインの方がロマンチックだし、思想無き科学の暴走に警鐘を鳴らす意味ではゴジラの方が胸に堪える。
が、進化論の黎明期にあって既に人間の文明の存亡について語られている点は驚きであるし、探求せずにはいられない人間の悲劇と、もう一点、改変された自然はいずれ緩やかに元へ戻っていくとする思考が素晴らしい。

己の探求欲に忠実であったモローも被造物よって殺される。アカデミーを追われ、功名心の虜であった若き科学者もまた絶命する。
生き残った者は生に執着しただけの男、プレンディックと動物たち。
生存したものはいずれ元の場所へ帰っていくのである。

  • 木原 悦子 訳
  • 出版: 原 書房
  • 発行: 1997/04
  • ISBN: 45-620-2904-8
  • 四六判/ 539ページ