1962年9月16日生まれ。新潟県栃尾市(現長岡市)出身。
|
![]() 舞台は19世紀、帝国が崩壊する頃のロシアとオーストリア。 貧しい辻楽士の養父に育てられたジェルジュは特殊な能力を持っていた。その能力とは他人の思考を読み取り、場合によっては書き換えることのできる能力。その特殊能力を見初められ、オーストリア諜報機関の長「顧問官」と呼ばれる男に拾われる。 徹底的な管理教育の中、ジェルジュは痛ましいまでに生真面目に、だが高い要求に応えることに快感を感じながら成長して行く。 やがて、第一次大戦勃発後、ボスニアへ潜入してセルビア民族主義者の陰謀を挫き、大戦末期にはオーストリア単独講和を目指す水面下の動きに深く関わって行く。 ![]() 何と言っても、佐藤亜紀の筆力は流石。 ストーリーは少女漫画よろしく、類稀な才能と早熟な感性を持った美貌の主人公が、歯を食いしばりながら己の力に歓びを見出す少年期から、その能力を以て諜報活動を軽やかにこなしていくカッコイイ男となる成長物語だったりする。 意外な展開もなく、第一次大戦前後の背景についても、「陰謀」しか考えておらず、この時代の持つ雰囲気は表面化しない。臭気すら感じない。だから、時代設定をする意味なんてまるで無い。 だが、魅力的な人物描写であっという間に、惹き込まれる。 知能の高さは己を如何に客観視出来るかということが一つのインデックスになるだろうが、主人公ジェルジュはその類稀な能力を有していても尚、奢りも溺れもせず、拠って立たされ、生かされているもの無抵抗である。同時に謙ることもしない訳だが、それが究極のナルシシズムにも思えるし、究極の奴隷状態にも思えてくる。 他の登場人物もなかなか魅力的で、その関係性も淡々とした表面の裏で、込み入った感情が交錯する様が何とも良い。 日本語の技巧が優れているっていう作者だからこその作品。 |
contributor小泉正宗 ![]()
|
オーストリアのとある貴族の家に生まれたメルヒオール・フォン・ヴィスコフスキー・エネスコは双子だった。 双子の兄弟の名はバルタザール。彼らは双子だったが、2人でひとつの身体しか持っていなかった。 たった一つの身体に2つの人格が同時に存在している…多重人格とは明らかにちがった彼らを人々は変人扱いした。 彼らの従兄弟であるマグダレーナだけは彼らが双子であるということを理解してくれていた。財産を使いつぶすくらいに遊びまわる彼らだったが、父の再婚相手ベルタルダと関係を持ち始めたことから彼らの人生は狂い始める。 愛しいベルタルダを追い求めるバルタザールと、彼の兄であるアンドレアス・コルヴィッツを警戒するメルヒオールは口論を繰り返す。そしてメルヒオールの身体は不思議奇跡を起こし… ハッピーエンドとは言えない終わり方が何だかとてもいい感じの話。書店ではあんまし売ってません。 |
contributor小泉正宗
|
舞台は1975年の日本。北陸地方のN県は突然ソビエト連邦の援助の下、日本からの独立を宣言する。当時まだ中学生であった主人公…、彼の祖父が経営していた紡績工場は祖父の死と同時に経営不振に陥り、父はやる気をなくし、母と祖母が何とか経営を支える。やがて父は姿を消し、母は工場を酒場に変え、さらには売春宿へと変えていく。その売春宿でちょっとした悪戯をやってのける主人公とその親友であったが、その悪戯が町の権力者の怒りに触れ、彼らは町を追われることとなる。N県と隣県の境のところでソ連軍に見つかった彼らだったが、姿を消してゲリラ相手に商売する闇屋となっていた父親に助けられる。 やがて彼らは父の知り合いのゲリラ組織に身を投じることとなり、主人公は爆弾を用いた破壊工作、親友は射撃のそれぞれ名手となって、その名を轟かせていく。ゲリラを率いる謎の人物「伍長」の指揮のもと、次々と戦果を挙げていく彼らだったが… N県が日本から独立を宣言するというところがおもしろすぎる。終盤の主人公の生き方が「バルタザールの遍歴」の主人公達と似ているような気がするのは紹介者だけだろうか? |