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スーザン・プライス Susan Price

エルフギフト |

 エルフギフト

ELFGIFT (1995)/ ELFKING (1996)
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Elfgift

Elfking
古代ブリテン。サクソンの王は今際の際に世継ぎとして指名したのは実子ではなかった。それは王族でも貴族でもなく、王がエルフの女に生ませた庶子エルフギフトだった。
キリスト教徒である嫡出子のアンウィンとハンティングには、土着の宗教を体現するエルフギフトの即位を認める訳にはいかず、エルギフト抹殺に向う。

急襲されたエルフギフトの村は壊滅。エルフギフトは復讐を誓う。
ワルキューレに導かれ、異界で剣の修行に励み、そして一度抜かれたら血を見るまでは鞘におさまらない魔剣「オーディーンの約束」を手に入れる。
一方、王子らは取り逃したエルフギフトを討つべく末の王子ウルフウィアード異界に送り込むのだが…。
賢人会議では老獪な王弟アセルリックを後継に指名。戴冠が行われる中、エルフギフトと異界に送り込んだ筈のウルフウィアードが現われる。
長子アンウィンはデーン人のラヴァン王の国へ亡命し、そこでデーン人の王子イングヴァイと親しくなり、エルフギフトをあろうことか異教の"血染めのワシ"の刑にすることを打ち明ける。
イングヴァイの兄でデーン人の族長イングヴァルドがラヴァン王の城にやって来た。
そのとき隻眼の竪琴引きウドゥが現われ…。

ゲルマンの神々がどのような性質を持っているか多少の理解をもってでなければ、血生臭くて途中で本を閉じたくなる。トールキンの作品に出てくるエルフやお伽噺に出てくるフェアリーをイメージしていると、とんでもないダメージをくらう。

スーザン・プライスの呪いのような描写は例え「ですます調」で訳されようが「ジュブナイル」を標榜しようが緩和されない。第一、血染めのワシの刑の描写など、大人になっても熱が出そうなくらいリアル。
別の見方をすれば、力と豊饒への純粋な賛美、同時に現実世界の苦痛と死への肯定であったかつてあった素朴な土着の信仰が持つ、偽善を差し挟む余地の無い冷徹さ表現しているともとれる。まさに神話そのものといった感。
しかし、だからといって神話を物語として再生できたかと言うとそうでもない気がする。
当時のデーン族やサクソン族などの文化や思考の差異・葛藤も描かれて興味深い箇所もあるが、魅力的な人物もおらず、軸となっている王位継承の争いは宙に浮き、エルフに憧れる少女の変貌に納得の行くプロセスも正当性も見当たらない。物語としてはこれだけのツールがありながら何とも勿体無い、という印象。
  • 金原 瑞人 訳
  • ポプラ社
  • 発行:2002/07
  • ISBN:4-591-07318-1上 4-591-07319-X下
  • 単行本