© Fantasia Lab. All Rights Reserved.
<<Back

テリー・プラチェット Terence David John Pratchett

1948年4月28日- 英ビーコンズフィールド生まれ。
ウェイコム工業高校に通った後、地元の新聞社で記者として働く。その後原子力発電施設での勤務等を経て作家に。
Pratchettが13歳の時、学校で発表した短編小説「ハーデース・ビジネス」が、1961年にサイエンス・ファンタジー誌の中で取り上げられたのが作家としての初仕事らしい。
代表的なディスクワールドシリーズは既に30冊以上出版されているが、現在も執筆が続いている。神話や古典、ベストセラー本や映画、歴史的事象から現代社会、組織論に哲学、ありとああらゆるものを題材にして、ユーモアあふれる、少々シニカルな物語になっている。シリーズの「三人の魔女」および「ソウル・ミュージック」はアニメ化されている。
ディスクワールドシリーズ以外の本も多数あるが、いづれも作品量の割に邦訳は僅少。

主な著書
・遠い星からきたノーム
・ディスクワールドシリーズ
・ゴーストパラダイス 他多数

ゴースト・パラダイス | グッド・オーメンズ |
ディスクワールド
ディスクワールド騒動記1 | 死神の館 | 刈り入れ | ソウル・ミュージック | 三人の魔女 | 魔道士エスカリナ | 異端審問 |
ピラミッド | 天才ネコモーリスとその仲間たち | 魔女になりたいティファニーと奇妙な仲間たち |
遠い星からきたノーム
トラッカーズ | ディガーズ | ウイングス |

 トラッカーズ ―遠い星からきたノーム1 

Truckers


The Bromeliad Trilogy

Truckers

「ノームの書」地下記Ⅴ……ここから物語が始まる。

流浪の民であるマスクリンたち。
彼らは過酷な狩猟生活により、かつてはたくさんいた仲間も野生動物の餌食になったりと、働き手である若者は減少、高齢化が進む。残された10人は、先祖代々伝わる導き手「シング」と石斧を手に新天地を求め、トラックに乗り込む。

 辿り着いた先はアーノルド・ブロス(創業1905年)という百貨店。
そこには売り場ごとの床下に国が存在し、「アーノルド・ブロス」という創造主を信じ、ストアが全世界であると考える数千のノームがいた。
「外」から来たノームとその言葉を信じようとしないストア・ノームだったが、ある日「アーノルド・ブロス(1905年創業)」は<在庫一掃セール><全品放出>という印を与え給うた。…つまりストアは閉店・崩壊するのだ。
 今や電気に反応した「シング」は<宇宙>がノームの故郷であることをバチカンペン国の大司教アボットに語る。アボットは今際の際、『「アーノルド・ブロス(1905年創業)」はそこ(故郷=宇宙)へ帰れとおっしゃっているのだと思う。』と呟き、マスクリンにストア・ノームを一人残らず故郷に連れ帰るよう依頼する。

 こうして「外」のノームを中心に、後の世に”「ノームの書」出ストア記”に記されるように、ストアのトラックを駆使し、ノームの大移動が始まるのだった。

旧約聖書のパロディーで始まり、終わるこの物語だが、ストア国内での政争、宗教や土地(床?:笑)による価値観の相違、個人と集団などなど、プラチェットらしく人間社会を眺めているようで、面白い。
 体長僅か12cm、1年はノームにとって10年分に相当する。なるほど、百貨店が全宇宙になる得るだろう。
 実はノームたち、1万5000年前に宇宙から飛来した。彼ら種族にとって15万年という年月は極めて高度な文明も知識も忘れ去るに充分な時間だった。

 人類だってホモサピエンスが出現したのが約3万年前。それほど過去のことなんて非常に稀有な確率で得られた化石の断片でしか知ることは出来ないし、余りにミッシング・リンクが多すぎる。もしかしたら我々だって宇宙から飛来してきたかも知れない。
 旧約聖書から当時の古環境を云々することもしばしばだが、BC13cくらいとされる出エジプト記もホモサピエンスから8700年程度の時間が経過している。人類の出生なんて本当は判りゃしない(とした方がロマンがあってよろしい:笑) 。
そんな訳で、この本を読んでいる最中、宇宙自体が精巧に創られた真空に浮かぶオブジェのようなもので、実はわれわれ人類はノームサイズ以下の生物だったりするのかも…なんて思いに囚われてしまったこと数回。

 このシリーズは多分プラチェットの作品の中で最も知られている作品なんじゃないかと思う。でも重版切れになって長い。  古本かあるいは図書館(都道府県立図書館くらいの規模には大抵蔵書がある筈)で是非お読み下さい!

  • 鴻巣 友季子訳
  • 講談社
  • 発行:1992/09
  • ISBN : 4-06-206098-1
  • A5判 / 293p

 ディガーズ ―遠い星からきたノーム2  

Diggaers
アーノルド・ブロス(1905年創業)が崩壊し、新天地を求め大移動を果たしたノームたちが落ち着いた先、そこは採石場だった。

 旧ストアノームたちはそれぞれ出身の売り場で得た知識を駆使しながら、新しい現実生活に対応する。
学校制を布いて文字を覚えたり、新しい文化や制度らしきものも生まれた。
しかし、マスクリンや一部のノームはここが安住の地ではないと漠然と感じていた。

 旧ペン国民は相変わらずストアノームたちのアーノルド・ブロス(1905年創業)信仰は捨てられない。特にアボット(司教みたいなもの)だったガーダーは「いつも何かの時には『大バーゲン』や『セール』といったサインがあった。どうしてアーノルド・ブロスはわれわれにサインをくれないのか?」過酷な生活を憂いながら、そう思っていた。
 そんな折、石切場の作業再開のサインが。
 更には現場監督者用事務所(人間の)の中で見つけた新聞にはこんな記事が。
『お楽しみを愛する地球漫遊家であり、大富豪のリチャード・アーノルドは、来週太陽のフロリダへ軽くジェットのひとっ飛び…同グループはつい何ヶ月か前…アーノルド・ブロスを火事で全焼…嫡孫、リチャード(39)は…』
 ペン国出身のガーダーはこれぞアーノルド・ブロスからの「メッセージ」であり、アーノルド・ブロスが「チャクソン39」をノームに使わせたのだと息巻く。
チャクソン39はフロリダにいる、そこへ行けばきっと我々を助けてくれると考えた。

 時を同じくしてマスクリンは15000年前に宇宙から<シップ(宇宙船)>に乗って先祖が来た時以来子々孫々受け継がれて来た超小型コンピュータ「シング」(電気のある所でないと通信出来ない)と話し合い、宇宙まで行けばシングがノームのシップを呼べるかも知れないという可能性のため、目的を異にしながらもガーダーとアンガロとともにフロリダを目指すため飛行場へ旅立つのだった。

 マスクリンたちが石切場を去った後、人間たちの採石作業が遂に開始される。
 仕切るのはグリマである。これまでノームは人間に隠れて生きてきた。さもないと妖精になって緑の中で暮らさなければならなかったり、庭で釣り糸を下げて座っていなければならなくなる。

 自分たちの土地を守るため、覚えた文字で立ち入り禁止などのサインを掲げてみるものの、悉く人間は無視。話し合いを拒否したものとノームは実力行使に打って出る。

 最終兵器…それはドルカスが密かに囲っていた巨大な鉄の牙を持つ竜、ジュクブ*だった。

新天地を求めて外の世界にやってきたノーム。しかし、まるで世界には自分たちしか居ないかの如くわがもの顔でのし歩く人間たちで溢れている。

 ノームの存在を架空のものとしか理解していないのろまな人間。人間の知性も文化も理解しないノーム。しかし、小さいノームたちが人間に対抗するには無理がある。所詮は人間が創造したものを利用して応戦する。この皮肉な状況は戦う武器が敵側から流出しているどこかの地域紛争に似ている。
ノームたちの権力争いと信仰への葛藤も、全く以て人間社会のメタファーなんだろう。けれども愛すべきものに満ちているということも。
*ジュクブ(JCB):多分英国ではメジャーな工作機メーカーだろうと調べてみた。案の定である。
  • 鴻巣 友季子訳
  • 講談社
  • 発行:1992/11
  • ISBN : 4-06-206099-X
  • A5判 / 229 p

 ウィングス ―遠い星からきたノーム3  

Wings


The Bromeliad Trilogy: Truckers, Diggers, and Wings

Wings
採石場に残ったノームたちが人間たちとの戦闘が開始される頃、シップを捕まえたいマスクリン、ノーム救済のためチャクソン・リチャード39に会おうとするガーダー、トラックみたいに機械を操作できることだけを夢見ているアンガロは、それぞれの野望を胸に秘めたまま一応の共通大儀「チャクソン・リチャード39」を探し出すため飛行場に到着した。
 しかし、肝心のチャクソン・リチャード39に会えるアテは無い。マスクリンは小型コンピューター「シング」を取り出し呼びかけた。シングは『39歳、リチャード・アーノルド…フロリダ州、マイアミ行キ205便、ファーストクラスノ、出発ラウンジニハイッタ…』と応答する。マスクリンは理解出来ないのだが、いちいちシングに訊きながら何とか目的のコンコルドに乗り込む。
コンコルド: 弾よりも二倍速く飛び、スモークド・サーモンが出てくるところ。
      『子どもノームの知りたがり科学百科』  アンガロ・ド・カフス著
 到着したフロリダでチャクソン39の鞄に忍び込んだ3人はホテル到着。しかし出発地の空港からフロリダまで6時間(ノーム時間でまる2日)空きっ腹を抱えていた。ガーダーは信仰も忘れてチャクソンがシャワーを浴びている最中にテーブルのハンバーガーを奪取する。だが、チャクソン・リチャードに見つかり、追いかけられるのだった。
 逃げ切った先で原住ノーム、フロリディアンに出会う。彼らは土着の宗教を持ち、NASAまでは遠い距離をフロリディアンたちの乗り物、鴨に乗る。遂にNASAの建物に侵入したマスクリンとシング。シングはノームのシップに交信を始めるのが…。

キーワードは「カエル」。
 グリマが本で読んだ喩え話である。南米には小さな花に卵を産み付けるカエルがいる。そのカエルは一生を花の中で生活する…一度花から出てしまったカエルはもう元の花には戻れない。

かつてはストアが全世界だったノームが人間社会に影響されながら次々と新しい世界を見つけだす。神と崇めていたものがただの人間だったことに気づき、世界中に自分たち以外のノームが居ることを知る。
 石切場に到着したシップに乗り込むノームたちだったが、ガーダーはこれを拒否。シップは全ノームのものであるから、ここに残り世界中のノームを探し旅に出る。「シング」と共に。それは信仰の人、ガーダーでなければ出来ない役割かもしれないとマスクリンは思う。
 これは信仰と革命のデカイ物語。
  • 鴻巣 友季子訳
  • 講談社
  • 発行: 1992/12
  • ISBN : 4-06-206100-7
  • A5判 / 253 p

 ディスクワールド騒動記1

The colour of magic
rate-3
contributor
KEN-G
絶版本を投票で復刊!

The Colour of Magic

テリー・プラチェットのディスクワールドシリーズの邦訳第1弾。

 偉大なる宇宙亀の背中に4匹の象、さらにその上に乗るディスク上に広がる世界。その大都市、アンク・モルポークに一人の旅人が現れた。「偶然」かはたまた「運命」か(あるいはその両方に対峙する女神の意表をつく逆転の一手か)、旅人は酒場で一人の魔術師に出会う。そしてここから二人の冒険が始まる・・・

 と書くと、いかにもファンタジーなプロローグだが、主人公達に少しばかり問題がある。
 旅人の名はツーフラワー。彼はディスクワールド初の「観光客」。ちびでめがねをかけセキュリティの行き届いたトランクを連れて写像機で辺り構わず記念撮影。出身は黄金溢れる遠い国、財布の中には金貨が一杯。ずれた金銭感覚で金を使い、単語帳を使って会話する。
 魔術師の名はリンスウィンド。名門魔術学校「見えざる大学」で学んだにもかかわらず、ある理由でたった一つを除いて魔法を会得できず落第した、偉大でもなければ英雄でもない魔術師とは名ばかりの男。
 あとは小銭を集める空き缶でもあれば喜劇の舞台には十分ことたりる。

 はからずもリンスウィンドはやっかいな観光客をガイドする羽目になる。観光客にとっては日常を離れためくるめく冒険。ガイドにとってはただでさえろくでもない人生が、よけいな事に首をつっこむ天才に巻き込まれててんやわんやの大騒動となり観客たる読者に笑いを提供する。

 ツーフラワーの本来の日常は、保険屋として営業成績に身を削り、想像力のない上司と他人の金の取り分を計算して過ごす変化のない毎日だった。ディスクワールド初の観光旅行者は、端から見てどうであれ、精一杯の冒険に勇気をもって乗り出した。
 他の誰でもない彼の物語の最初のページを開くために。
 彼は言う。

「僕は時々思うんだ。たとえ一生かけてディスクワールド中を旅して歩いても、見ておかなきゃならない物を全部みることはできないだろうって」
「見ておかなきゃいけない色々な世界を百分の一も見ないうちに死んでしまったら、と思うとぼくは……とても、つまらないような気がするんだ。それにもちろん、ものすごく腹も立つし」

 僕は時々思う。今読んでいるこの物語。結末を知らないままある日突然死を迎えなくちゃならないとしたら?
 まだまだ表紙も開いていない物語。彼らに出会うことなく命が終わるとしたら?

 そう考えるとほとんど恐怖と言ってもよいぐらいの静かで激しい感情でいっぱいになる。

 この世の中に語り継がれてきた価値ある物語、これから語られる物語。少なくとも出会うことの出来た物語のおしまいのページを、ふぅーっと一息ついて閉じることが出来るように。僕にとっても。あなたにとっても。

  • 安田 均 訳
  • 角川書店
  • 発行:1991/05
  • ISBN : 4-04-274501-6
  • 文庫 / 356 p

 異端審問  

Small Gods
contributor
KEN-G
異端審問 (A DISCWORLD NOVEL)

Small Gods
 原題の直訳は”Small Gods”.「小さき神々」.
信仰を一身にあつめ強大な力を持っていたはずの偉大なる神オムは気がつけば小さき亀の姿.自らが何者であったかすら忘れかけた頃に純粋な信者ブルサに出会い,自我を取り戻す.そして彼を新たな予言者として力を取り戻そうとする.

 Discworld自体が現実世界のパロディとして存在する中,信仰と宗教の違い,矛盾を痛烈に皮肉っている.邦題は「それでも地球は動く」とつぶやき,異端の汚名を1992年まで解かれることのなかったガリレオ・ガリレイにちなんでいると思われ,作中「カメは動く」と書いた著者,ならびに邦題を選んだ訳者の機知にニヤリとさせられる.
物語は二人(?)の登場人物の成長を追うことができる.盲信し疑いを抱かなかったものが自分で考えることを獲得していくブルサと,そして一方は今まで見返らなかったものの考え方を視点を変えられたことによって学んでいくオムである.「我思う故に我あり」だ.

 物語を通して至る所に哲学的命題をパロディという形で扱っている.「聞くもののない森で倒れた木は音を立てるか?」転じて「信仰ないものに囲まれた神は神か?」 
決して批判しているわけではなく,「自分で考える」ことを訴えている様に読みとれた.

 付け加えるに、「自分のみで考える」ことは否定しているが。「自らの考え」は内向することではなく他者との対話であるのだろう。

 学びつづけるブルサは「忘れる」ことがない.データをデータとしてファイルできる訳者・久賀氏曰く「コンピューター的」知性をもつ.コンピューターは賢いか? 少なくとも物語冒頭の彼は賢いとは言えないだろう.

 「忘れてしまった」と穏やかにつぶやくとき,彼は明らかに賢人だった.

 地球が丸くて自転しており太陽の周りを回っている.ガリレイ,コペルニクス,宇宙技術の発達によって,幼稚園児でも知っている事実だ.しかしながら,あなたは地球が丸いのを自分の目で見ましたか?メディアや写真ではなく? 僕は見ていない.


contributor Leon
シリーズ13作目にあたる"Small Gods"の邦訳。
主人公のブルザは、オム教の教会に属する最下級の聖職者なのだが、ある日のこと日課の菜園での作業をしているところへ"偉大なるオム"自らによって語りかけられる。
しかし、ブルザが辺りを見回しても誰も居らず、ただ足元に小さなヨレヨレの亀が期待を込めた目で見つめているだけだった・・・

ディスクワールドの神々は、日本の「八百万の神」にも似て実に多種多様なのだが、その神々のパワーの源泉は他ならぬ信者達の信仰心。
オムには多数の信者がいて大きな力を持つ神だったが、教会組織が肥大化するにつれ、人々の信仰対象は偶像や高位の聖職者たちにすり替わり、オム自身も気づかぬうちに卑小な亀の姿に成り下がってしまったのだ。

ブルザはその愚直さゆえに、確固たる信心を保持しているただ一人の「真の信者」で、そのブルザから見放されたらオムには"神としての死"が待ち受けている。

一方の教会では、異端審問官ヴォルビスが人々の恐怖心をコントロールしてその覇権を掌握するようになっており、それに気づいたブルザは非力ながらも特有の愚直さで対抗していくのだが・・・

一般的にタブー視される「宗教」をテーマにした、ディスクワールドとしては少し重めの作品だった。

しかしユーモアは健在で、今回のポイントは栄光の日々が忘れられずに、大言壮語を吐く小さな亀の姿をしたオム。

絶頂時には稲妻を自在に操り、大きな雄牛の姿で人々の前に姿を現し、異教徒をその蹄にかけたと言うのだが、今では彼を捕食しようとするワシの影にさえも怯える始末。

事が思い通りに運ばないと、直ぐに「地獄へ落ちよ!」などと毒づくのだが、以前のように呪いを具現化する力は無くなっている。
そして亀の姿となった神らしく「新鮮なレタスよ、在れ!」という言葉も空しくて可笑しい。

また、シリーズの他の作品を読んでいれば「黒マントの鼠」には爆笑だろう。

「真面目な可笑しさ」を提供し続けるディスクワールド・シリーズに麻薬のごとき常習性を感じた。
  • 久賀 宣人 訳
  • 鳥影社
  • 発行: 2000/08
  • ISBN : 4-88629-506-1
  • B6版 / 428 p

 死神の館  

MORT


絶版本を投票で復刊!

Mort
神のジョークだけで成り立つ、巨大な象の背に乗る4頭の象が支えるディスクという世界。
 その世界の片隅に生きていた少年モルト。彼は体中の関節が人並み以上にあるのではないかと疑うくらいバラバラな動きをする不器用さ。
 あまりにも「使えない」息子を奉公に出すため父親は市に連れて行き雇い主が現れるのを待つのだが、漸く現れたその雇い主は死神だった。
 死神とモルトの雇用関係が成立し、モルトは仕事というものについて死神から徹底的に教え込まれる。

 ある日、上司である死神は働き詰めの生活にうんざりし、モルトに仕事を任せる。モルトは必死に職務をこなしていくが、職務施行上やってはならない間違いを犯してしまう。己のミスを何とかカヴァーしようと躍起になっていく過程でモルトは死神らしくなっていく。
 『死神の仕事をしているものが死神だ』と。ある程度まではなりたいものに人はなる。環境から与えられる力は大きい。しかし最後の土壇場で詰めの甘さを思い知る。
 一方、人生の楽しみを学び、エプロンをつけてトラバーユ先で厨房に立ち手際よく調理をしていた死神だったが、「召還魔法」によって呼び出される。
 召還された死神はモルトの職務ミスに激昂し、己の仕事の情熱に再び目覚めるのだった。

どうして今までこの本、というかテリー・プラチェットに巡り会わなかったのか悔やまれる。
本書は必ず人の居ない場所で読むことをお勧めしたい。ページを繰る度に肩が揺れること必至。くすくすであったり、大爆笑であったり、これは端から見たら非常に怪しい光景である。

全く長年同じことをやっていると休みたくもなるし、違うこともしたくなる。しかし天職ってものはあるらしく、餅屋は餅屋なのだということ。
また、銅像になった伝説の大魔導師も現役ではないと如何に粗末な扱われ方をするかなど、実に軽妙・滑稽に人生の教訓があちこちに散らばっている。
 シェークスピア、トールキンやル=グィンの作品をパロっている箇所もいくつかあって、これらの作品を読んだ方は苦笑される筈。現実の生活に埋もれ気味、疲労気味のあなたにお勧めの一冊!

(数点の誤植あり。改訂を待ちましょう。)
  • 久賀 宣人 訳
  • 三友社
  • 発行:1977/07
  • ISBN : 4-88322-621-2
  • 四六版 / 332 p

 魔道士エスカリナ 

Equal Rites
ラムトップ山系の辺境に8人兄弟の8番目の鍛冶屋がいた。
 その鍛冶屋に8人目の子供が生まれようとしてた時、ドラム・ビレットと名乗る老魔道士が現れる。
この魔道士には死神がまとわりついていた。つまり死期が近づいていたのだ。
彼は魔力の象徴でもある杖の後継者を探してやって来た。
 「8番めの息子の8番め」というのは生来の魔道士であることを意味し、ビレットは生まれたばかりの鍛冶屋の赤ん坊に杖を渡して息をひきとる。
 だが、待ってくれよビレットさん、赤ん坊は女の子なんですけど…。
 こうして史上初の女魔道士エスカリナが誕生した。

 エスカリナは土地の魔女グラニー・ウェザワックスの元で有り余る<才能>の制御方法を教え込まれるが、エスカリナの才能はグラニーのような一介の魔女が指導できる域を超えたものだった。
 グラニーは散々迷った挙句、エスカリナを魔道士の最高教育機関であり、権威の象徴でもある「見えざる大学」に入学させることを決意。大都会アンク・ポルポークへと向かう。

 エスカリナはそこで「魔道士は男のもの」である現実をまざまざと見せつけられ正規の入学はできなかったが、グラニーの知恵(?)で「裏口入学」を果たす。
 不機嫌に掃除をしながら隠れて受講する毎日。
 ある時、エスカリナは図書館で冥界イエローページとも言われる暗黒魔法の書を読もうとした一人の若き魔導師シモンと居合わせ…。

 エスカリナとシモンを助けるためにドタバタの様相を呈しながらグラニーと学長カッタングルは協力して行く。
 この過程で大魔導師にして学長カッタングルはアカデミーの世界では知ることの出来ない<奥義>をグラニーから教わって行くのだった。

原題通り、男女平等がテーマなのだが、慣習の中には大して意味もなく決定されていることが多かったり、妙な立場に固執せず、偏見をとっぱらって共同作業した方がずっと楽しく、うまく行くってコトが書かれているよう。

 魔法界の最高権力者ともいえる「見えざる大学」の学長を懐柔して行くグラニーが描かれている章のタイトルが「蠱惑」であったり、魔法書の命名(あとがき参照)や、相変わらずプラチェットのセンスには脱帽!
  • 久賀 宣人 訳
  • 三友社出版
  • 発行:1997/07
  • ISBN : 4-88322-622-0
  • 四六判 / 306 p

 三人の魔女 

Wyrd Sisters
rate-3


Wyrd Sisters
森の中に佇む小国ランカー。その領主ヴェレンスが小心なフェルメット伯爵によって暗殺される。死の淵にあるヴェレンスの許に死神が現れるが骨折りだった。何故ならばヴェレンスは亡霊になるよう運命づけられていたからであった。少々の亡霊としての処世を言い残し、死神は去って行く。
 間もなくヴェレンス王の幼い嫡子にも追手がかかる。王子を救い出した男が、負傷しながら辿り着いた先は寄合中の三人の魔女、グラニー、ナニー・オグ、マグラートのもとであった。男は王子を手渡し事切れた。

 三人の魔女は旅芸人一座の親方夫婦に王子を預ける。名付け親となった魔女が贈物としてかける魔法とともに。
 一方亡霊となったヴェレンス王は我が身の「何事も起こせない」透過性を嘆き、ランカー城に囚われていた。腹を空かしながら復讐のために息子を助け出すべく、城からの脱出を考えていた。

 時は流れ、狂気が進行するフェルメット王は己が暴政に疲弊した国民と前王殺害の呵責に悩まされた挙げ句、「言葉」の力に気づく。自らを正統化させる芝居を打たせるため、道化を呼び出し、一流の芸人と書き手の探索を命ずる。
 そして、今やカリスマ芸人に成長したヴァレンスの遺児トムジョン、坑夫になることを拒み芝居の脚本に心血を注ぐ<芝生の飾り物>フエル、彼らの許に道化はやってくる…。

これまでのディスク・ワールドも他所からのパスティシュがあちこちに見つけられて楽しいのだが、今回は最も引用が多いような気がする。
 大概シェークスピアの「マクベス」をモチーフにしているが、「シンデレラ」や「眠れる森の美女」などからの引用もあって面白い。相変わらずページを捲る度に肩が揺れる。
 何より面白いのは傑出した人物描写。ちょっと毒があり、身近な誰かに投射できる人物が必ずいる。しかし、それは丸裸になった時の誰かであるから余計に可笑しい。

 impuct pointは☆3つだが、これは他のプラチェット作品の絶対値が高いため。
  • 久賀 宣人 訳
  • 三友社出版
  • 発行:1997/07
  • ISBN : 4-88322-623-9
  • 四六判 / 398 p

 ピラミッド 

Pyramid (1954)


Pyramids
長年のピラミッド建設により疲弊した国家財源を何とかすべく、ドゥジェルベイビ国の王子テピックは高収入を得られる暗殺者となるべくアンク・モルポークの養成学校に入学する。 (既にこの設定で爆笑)
厳格かつ理不尽な学校生活に耐え抜き、卒業試験にも何とか合格。暗殺者としての未来を手に入れたのだが、父王の崩御のため自国に戻り戴冠する。

長大な年月を王に仕えてきた最高神官ディオスの指揮のもとで毎日が執り行われる中、寄宿制と国際都市アンク・モルポークでの生活によって人格形成されたテピックは自国の伝統と有り様に対する疑問を深めていく。
ある日、前王が建設したピラミッドが引き金となって、ドゥジェルベイビに異変が生じる。

少々やりすぎと思われるくらい国家や官僚組織やアカデミー:社会のピラミッドをシニカルに取り上げる様は胸がすく。
古典哲学者・数学者(文学者まで!)が揶揄されている場面は大いに笑えし、名前をもじった人物が登場するので非常に判りやすい。また、歴史的イベントも盛りだくさん。覚えがある方は当然だが、無くても勿論楽しく読める。

長く歴然と存在する伝統や習慣が見方を変えるとアホラシイ社会の中が
 暗殺者として鍛え上げた技術を駆使し、我が手で伝統を崩壊させる王子テピックが巨大なピラミッドに登攀中、あわや手を滑らす。
下で言い争っていた祖先たち(当然、生者ではない)は国事よりも家族を優先させ、 一丸となって人間ピラミッドを作り、子孫テピックを助ける様子は泣ける(笑いすぎて)。

…と爆笑しながらも、科学・思想・伝統といった存在を実はまじめに考えさせられていたりする。しかし、パイはπに非ず。素直な人はプラチェットは要注意。鵜呑みにしてはいけません。
  • 久賀 宣人 訳
  • 鳥影社
  • 発行:1999/03
  • ISBN : 4-7952-2593-1
  • B6版 / 410 p

 刈り入れ 

Reaper Man
rate-4



Reaper Man

死神の職務は当然死んだものの肉体から魂を刈ること。職務遂行に感情は不要。
 だが、「死神の館」で見せた彼の弟子モルトの不始末と、その職務上の探求心が災いして人の行動や感情を見つめ続けるうちに身に付いたヒューマン(?)な行動は、宇宙を司る全知「アズリール」たちにとって由々しき事態であった。
 よってアズリールは死神に解雇決定を下す。

 死神は自分の「命の砂時計」に砂が入っているのを発見、しかもその砂の残り僅かなことに気づく。
 いきなり有限の生を与えられることなった死神は、貴重な残りの生を全うしようと、ある農場で働くことにした。時は収穫期。人手が足りない。
 当然鎌使いは超一流。彼にとっては「1振り/1個体」が原則であるため、麦を束ねることなく1本づつ異常な迅速さで刈る。(想像してみよ!)その仕事の正確さや行いの律儀さ、道具に対するこだわりは長年の死神技の哲学が反映されている。

 一方、見えざる大学では、齢130で天寿を全うしようとする魔道士ウインドル・プーンズのためにさよならパーティーが催されていた。
 ウインドルの魂は一旦は肉体から離れるものの死神が現れないために、やむなく元の肉体に戻る。
 ゾンビになったウインドルを道士たちは「正しく」死なせようと躍起になる。死ねないことを知りつつも大学の連中の依拠している観念が理解できるウインドルは一見、抵抗も見せずにされるがままになっているのだが、それまでの黄昏れた思考回路が一度死んだことで明晰になったウインドル。死ねない自分の身の上ばかりでなく町中の異変に気づき、埋められた場所からもぞもぞと起きあがる。

類稀な言語センスと笑いのツボへのセンスで、相変わらずプラチェットにはのっけから腹筋が鍛えられる。

 ウインドルの姿は第2の人生を静かに受け入れようと思いつつも経験が邪魔をしてなかなか隠居出来ない年寄りの姿や、既に死すべき状態にありながら家族の手前勝手な温情で延命措置をとられている病人とか、そんなものにオーバーラップしてしまう。
 正しく死ねない学長を取り巻く見えざる大学の教授陣のパニック状態も、テーゼ(彼らにとっては拠って立つものだ)を失った権威者も一皮剥いたナマの人格が見えて面白い。他方、一見馬鹿者に見える庭師モドの現実的な視点と許容量は<持たざる者>の強さを図らずも表現しているようで好きな構図である。

 「死神の館」に続き、1つの運命を変えることが大異変に繋がるということが主軸ではあるのだけれど、現実世界にもあることで、1票投じたばっかりに某国トップのお陰で、世界中の人間がバタバタ死んでみたり、死神ではない我々だって選択的に運命を変えようとする場面なんていくらもあり、結局それを望みながら常に生きているようなものだ。
 延命措置や植物人間の状態で生かし続けるのも一種のゾンビなんだろうかと思ってみたり…。特に死ななくてもリタイア後の第2の生を外部から与えられた時、人はこんな感じなのかなぁなんて思ってみたり…。
 いずれにせよ、「まじかよ!?」と思われるような理不尽な状況でも、せいぜい個を全うさせながら、終いには愉しんでみたり出来る生のエネルギーって、やっぱりスゴいもんよね。

 科白と言葉遊びの面白さは邦訳ものの中ではDW中1番かも知れない。
ヘモ・ゴブリン…血管中にわらわらと泳いでいるゴブリンを想像しちゃったYO!

  • 久賀 宣人 訳
  • 鳥影社
  • 発行:2004/10
  • ISBN : 4-88629-864-8
  • B6版 / 414 p

 ソウル・ミュージック

Soul Music
ソウル・ミュージック (A Discworld Novel)

Soul Music
  • 久賀 宣人 訳
  • 鳥影社
  • 発行:2006/01
  • ISBN : 4-88629-954-7
  • B6判 / 489p

 天才ネコモーリスとその仲間たち

The Amazing Mourice and His Educated Rodents
rate-3



The Amazing Maurice and His Educated Rodents
モーリスというネコ、ある日言語を操り、思考することが出来るようになった。
 みると周辺のネズミたちも同様に喋り、思考している風だ。多分魔法大学から出るゴミを漁るうち、「ニューラット」になったのだろう。
モーリスはネズミのようにゴミ捨て場なんか漁りはしないのだが…

モーリスは考えた。このネズミたちと一儲けしてやろうと。
楽隊ギルド出身のぼんやりした笛吹の少年を仲間に加え、ネズミの増殖で困る町々に行き「ハメルーンの笛吹男」よろしく、ニューラットたちを引き連れ、市中をデモンストレーションして歩くのだ。町は喜んでネズミ駆除の報酬を払う。

モーリスは金儲けだけを考えていたがネズミたちは違った。
人を騙すことはよくないと思っているし、文字を読めるようになった彼らは、どこかの子供が捨てたであろう『ウサギのバンシーさんの冒険』をバイブルとし、いつか海を渡り、ネズミだけのユートピアを目指しているのだ。
ネズミたちの良心に押されて、「最後の儲け仕事」に着手するモーリスたちだが、その町は他の町とは何かが違っていた。実際にはネズミなどまるで見あたらない。暗い陰謀の臭いがする…。

人間たちが仕掛ける罠や毒を専門に処理する特殊部隊、精神的支柱になっている盲目の理論家、従順で正確な書記、一線を退いてはいるものの頑健で屈強な老ボスなど、それはまるでどこかの革命軍さながら。組織の中でそれぞれのネズミたちの個性がぶつかり合うが、面白いのは終盤、「バンシーさん」思想が<嘘だ>と知った理論家デンジャラス・ビーンと現場での戦いに身を投じていたダークタンの最終局面における行動様式。

ネズミを使って一儲け…しかアタマになかった守銭奴モーリスも、いつの間にか彼らを擁護し、得にもならない犠牲を払うことをよしとする。

ローカス賞受賞作品の児童書であるが、熟成した大人なテーマを扱っている
  • 冨永 星 訳
  • あすなろ出版
  • 発行:2004/04
  • ISBN : 4-7515-2351-1
  • A5判 / 351p

 魔女になりたいティファニーと奇妙な仲間たち

The Wee Free Men (2003)


The Wee Free Men
  • 冨永 星 訳
  • あすなろ出版
  • 発行:2006/10
  • ISBN : 4-7515-2352-X
  • A5判 / 367p

 ゴースト・パラダイス 

Johnney and the Dead
rate-4
Johnny and the Dead
*リンクは原書。
講談社から出版された文庫の表紙も同じイラストを使用している。
現在重版切れ。
ジョニーには幽霊が見えた。
下校途中、墓地に寄り道をした時、装飾過多な庭小屋のような墓の扉を何となくノックした。
すると、扉が開き、「なにか?」…ハロウィンの前の週のことだった。

何故見えるようになったのか?
死者の一人オルダーマン(1822年生-1906年没)は言う。
       『きみが見まいとする努力を怠っておるからだ。』

折しもこの共同墓地は土地買収業者の手によって、解体・新しいビルが建つことになっていた。
死者たちは、「この墓を失ったら我々の居場所は無くなるのだ、墓の存続のために努力せよ」と、自分たちの存在を「見れる」ジョニーに概ね強制的に依頼する。
彼らの依頼を受け、ジョニーと親友3人(半信半疑ながら)は墓地存続のために動き出す。
つまらない荒れ果てた元新興住宅地の中で唯一鳥が遊び、緑の多い共同墓地の存在意義を(ジョニーとは違う観点から)住民達も気付き始める。
 だが、墓地存続に向け世間が動き始めたハロウィン当日、当の「ポスト老人の方たち」は…。

登場する死者のみなさんは20世紀初頭、社会主義運動に傾倒していたり、女性参政権運動に参加していたり、あるいはマフィアであったり…など、一見スゴそうに見えるが、実は偉大なフツー庶民。
この往年の空気を纏うフツーに偉大な人物が、今の社会に生きる少年達のと関わりの中で、世界や技術の変わり様に驚き、次第に順応していく。

死者たちの限定された期間の中で謳歌する生(?)と、日がな一日テレビの前に座る祖父、老人ホームにいる祖母など、死へも到達できない生の対比が巧い。
 いつものプラチェットの言葉遊びやパロディは幾分ナリを潜めているが、少年達の会話は抜群。

この作品は1993年のもの。当時ソビエト連邦が崩壊し、東西冷戦構造が消滅した。
 世界観は変わる、、、しかも変える気になれば変わる…プラチェットはそんな思いで書いたに違いない。
あれから更に時も世界も流れ、国際貿易センタービルなど、今はもう存在しない固有名詞が出てくる。
  • 鴻巣 友季子 訳
  • 講談社
  • 発行:1994/08/15
  • ISBN : 4-06-185775-4
  • 文庫 / 270 p

 グッド・オーメンズ

Good Omens (2006)

上

下

Good Omens
story



reviewニール・ゲイマンの他の著書を読んで、「この人は絶対にテリー・プラチェットに影響を受けたであろう」と思っていたが、さもありなん。こんな共著を持ちこんだのはニール・ゲイマンに違いない。
だが、その笑いのセンスは如何に影響を受けたとて、プラチェットの心底笑える品の良い笑いには及ばず、どこがプラチェットオリジナルか否か、プラチェットファンには容易に予測できるのではないか?
あとがきで金原氏が「スラップスティック」と定義しているが、スラップスティックになっている部分はゲイマンの仕業。大味なアメリカンである。ブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」と「明日なき潜伏」を掛けたり、失笑と心底笑える箇所が混在。失笑はゲイマンパートだと商売上手のゲイマンを私は揶揄したくなったりする。

さて、
  • 金原 瑞人 訳
  • 角川書店
  • 発行:2007/03
  • ISBN:4-047-91541-6上 4-047-91542-4下
  • A5判/317p/293p

 ウィングス ―遠い星からきたノーム3  

Wings


The Bromeliad Trilogy: Truckers, Diggers, and Wings

Wings

採石場に残ったノームたちが人間たちとの戦闘が開始される頃、シップを捕まえたいマスクリン、ノーム救済のためチャクソン・リチャード39に会おうとするガーダー、トラックみたいに機械を操作できることだけを夢見ているアンガロは、それぞれの野望を胸に秘めたまま一応の共通大儀「チャクソン・リチャード39」を探し出すため飛行場に到着した。
 しかし、肝心のチャクソン・リチャード39に会えるアテは無い。マスクリンは小型コンピューター「シング」を取り出し呼びかけた。シングは『39歳、リチャード・アーノルド…フロリダ州、マイアミ行キ205便、ファーストクラスノ、出発ラウンジニハイッタ…』と応答する。マスクリンは理解出来ないのだが、いちいちシングに訊きながら何とか目的のコンコルドに乗り込む。

コンコルド: 弾よりも二倍速く飛び、スモークド・サーモンが出てくるところ。
      『子どもノームの知りたがり科学百科』  アンガロ・ド・カフス著

 到着したフロリダでチャクソン39の鞄に忍び込んだ3人はホテル到着。しかし出発地の空港からフロリダまで6時間(ノーム時間でまる2日)空きっ腹を抱えていた。ガーダーは信仰も忘れてチャクソンがシャワーを浴びている最中にテーブルのハンバーガーを奪取する。だが、チャクソン・リチャードに見つかり、追いかけられるのだった。
 逃げ切った先で原住ノーム、フロリディアンに出会う。彼らは土着の宗教を持ち、NASAまでは遠い距離をフロリディアンたちの乗り物、鴨に乗る。遂にNASAの建物に侵入したマスクリンとシング。シングはノームのシップに交信を始めるのが…。

キーワードは「カエル」。
 グリマが本で読んだ喩え話である。南米には小さな花に卵を産み付けるカエルがいる。そのカエルは一生を花の中で生活する…一度花から出てしまったカエルはもう元の花には戻れない。

かつてはストアが全世界だったノームが人間社会に影響されながら次々と新しい世界を見つけだす。神と崇めていたものがただの人間だったことに気づき、世界中に自分たち以外のノームが居ることを知る。
 石切場に到着したシップに乗り込むノームたちだったが、ガーダーはこれを拒否。シップは全ノームのものであるから、ここに残り世界中のノームを探し旅に出る。「シング」と共に。それは信仰の人、ガーダーでなければ出来ない役割かもしれないとマスクリンは思う。
 これは信仰と革命のデカイ物語。

  • 鴻巣 友季子訳
  • 講談社
  • 発行: 1992/12
  • ISBN : 4-06-206100-7
  • A5判 / 253 p

 ウィングス ―遠い星からきたノーム3  

Wings


The Bromeliad Trilogy: Truckers, Diggers, and Wings

Wings

採石場に残ったノームたちが人間たちとの戦闘が開始される頃、シップを捕まえたいマスクリン、ノーム救済のためチャクソン・リチャード39に会おうとするガーダー、トラックみたいに機械を操作できることだけを夢見ているアンガロは、それぞれの野望を胸に秘めたまま一応の共通大儀「チャクソン・リチャード39」を探し出すため飛行場に到着した。
 しかし、肝心のチャクソン・リチャード39に会えるアテは無い。マスクリンは小型コンピューター「シング」を取り出し呼びかけた。シングは『39歳、リチャード・アーノルド…フロリダ州、マイアミ行キ205便、ファーストクラスノ、出発ラウンジニハイッタ…』と応答する。マスクリンは理解出来ないのだが、いちいちシングに訊きながら何とか目的のコンコルドに乗り込む。

コンコルド: 弾よりも二倍速く飛び、スモークド・サーモンが出てくるところ。
      『子どもノームの知りたがり科学百科』  アンガロ・ド・カフス著

 到着したフロリダでチャクソン39の鞄に忍び込んだ3人はホテル到着。しかし出発地の空港からフロリダまで6時間(ノーム時間でまる2日)空きっ腹を抱えていた。ガーダーは信仰も忘れてチャクソンがシャワーを浴びている最中にテーブルのハンバーガーを奪取する。だが、チャクソン・リチャードに見つかり、追いかけられるのだった。
 逃げ切った先で原住ノーム、フロリディアンに出会う。彼らは土着の宗教を持ち、NASAまでは遠い距離をフロリディアンたちの乗り物、鴨に乗る。遂にNASAの建物に侵入したマスクリンとシング。シングはノームのシップに交信を始めるのが…。

キーワードは「カエル」。
 グリマが本で読んだ喩え話である。南米には小さな花に卵を産み付けるカエルがいる。そのカエルは一生を花の中で生活する…一度花から出てしまったカエルはもう元の花には戻れない。

かつてはストアが全世界だったノームが人間社会に影響されながら次々と新しい世界を見つけだす。神と崇めていたものがただの人間だったことに気づき、世界中に自分たち以外のノームが居ることを知る。
 石切場に到着したシップに乗り込むノームたちだったが、ガーダーはこれを拒否。シップは全ノームのものであるから、ここに残り世界中のノームを探し旅に出る。「シング」と共に。それは信仰の人、ガーダーでなければ出来ない役割かもしれないとマスクリンは思う。
 これは信仰と革命のデカイ物語。

  • 鴻巣 友季子訳
  • 講談社
  • 発行: 1992/12
  • ISBN : 4-06-206100-7
  • A5判 / 253 p