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O.R. メリング O. R. melling

アイルランド ダブリン生まれ。
5歳の時にカナダに移住。哲学や中世史を学び、数種の職業を経て作家に。
1994年「妖精王の月」でルース・シュワッツ賞受賞。現在はアイルランド在住。

主な著書
・ドルイドの歌 ・妖精王の月 ・歌う石 ・夏の王 ・光をはこぶ娘

ケルト妖精シリーズ
夏の王 | 妖精王の月 | 歌う石 | ドルイドの歌 | 光をはこぶ娘 | 夢の書 |

 夏の王

The Summer King  (Chronicles of Faerie)


The Summer King (Chronicles of Faerie)
メリング「ケルトファンタジーシリーズ」4作目。
 「妖精王の月」の後日澹ともとれる位置づけであり、前回の登場人物も2人ほど現れるが独立した物語なので前作未読でも全く支障はない。

主人公ローレルには夢想家のオナーという双子の妹がいた。
 何をするにも何処へ行くにも一緒の二人だったが、ある日事故でオナーは還らぬ人となる。
 ローレルは悲しみの中、オナーの形見の日記を読むが、そこにはオナーが唯一ローレルに隠していた事が綴られていた。
 事故の原因は自分にあると考えた彼女は悔恨の思いから生前オナーが求めていた世界へ踏み入ることになる。

 これまで同様、主人公とともに謎解きをしながら美しい現代アイルランドの風景の中を旅する中、次第にケルトの妖精伝説の世界に入り込む…このメリングの手法は実に楽しい。
ローレルの行く手に次々と謎をもたらす、美しく可憐なイメージとはまるで違う破天荒で気紛れな妖精たち。それはまるで自然そのものの様な印象を受ける。
主人公ローレルと奇しくも旅をともにする幼なじみの少年の二面性に隠された意外な事実。そして彼との爽やかな恋を通して、相反する世界間の共存と別れを描いた、痛みを伴う風のように過ぎ去る、ひと夏の物語。


♣ contributor マキシム
 書評に惹かれ”前作未読でも支障なし”に安心して本日読了。
アイルランドは以前から、一度訪れてみたいところですが、
およそ物語というものは、その生まれた土地の自然と深く結びついているものなのですね。島の風景、海、自然がそこにあるからこそ、現代と妖精世界の錯綜が違和感なく読めるのでしょう。
ローレルは祖父母のいるアイルランドにカナダからやって来ましたね。我々が読んでさえ、これほど魅力のある世界ですが、たとえば、北米へ移民したアイリッシュの人達、特にもう帰るところのなくなっている人達にとって、こういう物語はどんな意味をもつであろう、などと、要らないことを考えてしまった。
また、愛する者の死を、どう受け止めるか、死後の世界をどうとらえるか、こんな豊かで幅広い、やはり妖精の住む自然があってこその捉え方があったのですね。
恋と冒険の物語としても楽しく読めました。
  • 井辻 朱美 訳
  • 講談社
  • 発行: 2001/07
  • ISBN:4-06-210829-1
  • 四六判 / 255p

 妖精王の月

The Hunter's Moon  (Chronicles of Faerie)
妖精王の月

The Hunter's Moon [PB]

カナダ人の少女グウェンは夏休みにアイルランドの従姉妹フィンダファーの許を訪れる。二人は長年夢見続けた妖精や物語の世界の秘密を探るべく旅を始めるが、早々に聖域であるタラの遺跡の塚山で一夜を明かそうとした。
 夢の中でフィンダファーは妖精王に誘われ従順に妖精世界へ足を踏み入れてしまう。一方、グウェンは一線を越えることに躊躇。目が覚めて見るとフィンダファーは本当に姿を消していた。
 ここからグウェンのフィンダファー奪回の単独行が始まる。

 グウェンは見知らぬ土地で「印」や「キーワード」をもらいながら、何とかフィンダファーと巡り会うことが出来るのだが、妖精たちがもらす「試練」に悉く負ける。
 もはやこれが最後という場面で彼女はグレイニアという老婆と出会う。
 彼女とその甥に助けられながら本来倒さねばならないのは妖精王ではなく「狩人の月」の…。


島のケルトの文化が今も色濃く残っているだろうアイルランドという場所を登場人物たちと一緒に移動し、古い遺跡や自然を目撃している気分になれるのは楽しく、アイルランドが合理的な現代の生活の中で生きる一方で土着の文化が未だ褪色せず共存しているということがよく判る。
 しかし終盤、それまでかなり上古の空気を吸っていたのが、やにわにキリスト教的モチーフを取り込み始め、あれ?という違和感。
 登場人物の味付けは抜群だったのに、こういう意味合いにしちゃったか、ということで☆3つ。
  • 井辻 朱美 訳
  • 講談社
  • 発行: 1995/02
  • ISBN: 4-06-207463-X
  • 四六判 / 271p

 歌う石

The Singing Stone (Chronicles of Faerie)


The Singing Stone
アメリカに住む孤児のケイのもとに、18歳の誕生日を前に18冊の差出人不明の本が届く。それは古アイルランド語で書かれた「歌う石」を中心とした物語だった。
 不思議なシックスセンスに導かれ、「歌う石」を手掛かりに自分のルーツを探すため彼女はアイルランドに旅立つ。
 エニスケリーの丘陵地帯、その山中でみつけた巨石のアーチをくぐった途端、ケイはケルトのトゥアハ・デ・ダナーン族の支配していた紀元前の世界へ迷いこみ、記憶をなくした古アイルランド語を話す少女アエーンと出会う。何をすべきか当惑する二人は、仙境の賢者フィンタン・トゥアンを訪ね助言を仰ぐ。トゥアンは二人に、終焉の迫っているダナーン族を救うために種族の古代の四つの宝を探せと言う。
 こうしてケイのアエーンを連れての宝探しの旅が始まった。

 二人の旅の行く手には、ドルイドたちの夢見の技によって裏切り者にされたダナーン族次代の女王エリウ、エリウ暗殺を計る奇怪な巨人、ゲーディル族やフィルボルク族などの様々な事件や神話の登場人物と事件が現れる。その一方、ケイやアエーンの恋が展開され、次第にアエーンの正体の謎なども解明されていく。まさに「魔法使いの織るタペストリー」の中の出来事。


滅亡の定めにあるダナーン族の運命は四つの宝の救出が鍵を握っているのだが、結局四つの宝を得、エリウが女王の座につき、ゲーディル族の侵略に対し平和的に降伏を選んだとき、「石」が歌いダナーン族は再び神々として認められる。そして最後に明かされるケイのルーツ。
 古代伝承の生活が鮮やかに描かれた神話色の濃い物語。
 予言に導かれた主人公が数々の試練を克服し、国家や民を救うといった直線的な物語はたくさんあるけれど、本書は「予言」というものの意味を少々突っ込んで描かれた風な印象がある。
  • 井辻 朱美 訳
  • 講談社
  • 発行: 1995/12
  • ISBN: 4-06-207933-X
  • 四六判 / 310 p

 ドルイドの歌

The Druid's Tune (Chronicles of Faerie)


The Druid's Tune
 カナダからアイルランドの叔父の家にやって来たローズマリーとジェイムズの姉弟。 この二人が謎の男ピーター(パーダル)の歌声に誘われ、「クーリーの牛捕り~アイルランドの神話叙事詩「トイン・ボー・クーリニャ」。コノハトの女王メーヴや英雄クーフーリンの活躍する」の時代へ迷い込む。

 二人は「クーリニャの褐色の牡牛」を奪うために、アルスターに侵入したコノハト軍に捕らえられる。ジェイムズはすぐれた戦士の手で戦闘術を習得し、偶然にコノハト軍を単身くいとめようとするアルスターの若き英雄にして神の子クーフーリンの御者兼従者となり、この英雄の活躍に協力する。
 姉は侵略軍コノハトの王女と暮らし、王子の恋人となるが、やがて弟とおなじくクーフーリンの従者となり、アルスターとコノハトの最終戦争を眼前にしながら、現代へと戻る。


 邦訳順は3冊目に当たるが、実際はメリング処女作。
 ためか、「歌う石」の出来が良すぎたためか、順に読んでいくと同一人物の作品なのかと首を傾げる箇所もある。
 設定した時代が興味深いだけにメリングらしからぬ突っ込みさや幻想性が欠けていたのが残念。
  • 井辻 朱美 訳
  • 講談社
  • 発行: 1997/01
  • ISBN : 4-06-208473-2
  • 四六判 / 319p

 光をはこぶ娘

The Singing Stone (Chronicles of Faerie)
上

下
  • 井辻 朱美 訳
  • 出版: 講談社
  • 発行: 2002/12
  • ISBN : 4-06-211634-0
  • 四六判 / 239 p