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● パトリシア・A・マキリップ Patricia A. MacKillip
1948年- 米オレゴン州セイラム生まれ
サン・ホゼ州立大学でM・A取得。
14歳の時に家族とイギリスへ夏休みを過ごす最中、退屈しのぎに30ページ程の童話を書いたのがきっかけ。
ジュブナイル系の作家として知られるが、筆力・構成力の確かさで、ファンの年齢層は広い。

主な著書
・妖女サイベルの呼び声 ・イルスの竪琴 ・影のオンブリア
参考サイト http://www.evan.org/McKillip.html
妖女サイベルの呼び声
影のオンブリア         
妖女サイベルの呼び声
The Forgotten Beasts of Eld




  • 佐藤 高子 訳
  • 発行: 早川書房 2005/031
  • ISBN: 4-89449-031-5
  • 1979年度世界幻想文学大賞受賞作

 曾祖父の代から魔術師の血を受け継いだサイベルは、祖父の代から集められた伝説に残る奇妙な動物とともに人里から隔離された山中の白い館で暮らしていた。
 代々愛情とは無関係に欲望のままに真の名を呼ぶことで相手を支配する術(相手の本質(心)を読み取る)によって伴侶を得てきた家系なだけに、サイベルもまた愛たるものが何か、同時に憎しみというものが如何なるものか教えられることなく、知識だけに拠って生きてきた。

 そこへサールのコーレンという若者がサイベルの母方の血筋を引く赤ん坊タムローンをサイベルに預けていく。
 タムローンを育てる過程でサイベルは愛情という存在を知り、穏やかに暮らしていたのも束の間、成長していくタムローンは実の父の存在を求め始める。この瞬間から運命の力はサイベルを憎悪と権力への憧憬に目覚める道へ走らせて行く。

 コーレンは柔軟な精神の持ち主であり、サイベルの魔術や世界を理解・共鳴する若者だった。そして一人の女性としてサイベルを深く愛するようになる。
 しかし、サイベルは己の自我や自尊心までもコーレンに委ねることは出来ず、ある復讐のために一人動き出す。


自由の象徴である巨大な白い翼を持つライラレンと名もない恐怖であるブラモアの関係の謎解きを主軸に、魅力的な幻獣たちとの会話、権力闘争に明け暮れる人間の深層心理や愛の形、真実の寛容さと残酷さ、などが重厚で色彩豊かに散りばめられ、強烈な視覚を伴って物語の中に引きづり込まれる。
影のオンブリア
Ombria in Shadow


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  • 井辻 朱美 訳
  • 発行: 早川書房 2005/031
  • ISBN: 4-89449-031-5
  • 2003年度世界幻想文学大賞長編部門・神話文学賞受賞作
 
古都オンブリア。ここを舞台とした地上と地下の、光と影の世界をめぐる物語。
それぞれの舞台とそこで生きる登場人物が、次第に惹起し、融合し、新たな世界が構築される。

地上ではオンブリアの大公ロイス・グリーヴが崩御。
愛妾リディアは、ロイスの大伯母ドミナ・パールによって宮殿を追われる。
彼女は里に帰る道々、刺客と盗賊に襲われるリディアは影のような存在に命を助けられる。
地上で行われる血なまぐさい陰謀と欲望の成就のため、密やかに手を貸す力があった。
それは、地下世界の旧い叡智であり、地上に起きる現象の鏡でもあり…。


 並行世界の物語はファンタジー読者であればお馴染みであるが、独特の修辞と唐突な印象すら持つ世界描写に、読みなれていない読者は違和感を感じるであろう程。
 しかも、視覚的には縦の印象。二重螺旋のように現実と影の二つの世界が織り合わされた世界だ。
 だが、相対する二つの世界(通常は交わることは無いのだが)を(意識・無意識に関わらず)自由に行き来出来る存在がいる。
 彼らの自由度の鍵は鏡や絵画、そして魔法である。

 重厚な宮殿内の様子、猥雑な町の風景…そこここに対比される二面性を織り混ぜながら分離されていたものが目がくらむように統合されていく。

 難は、終盤のまとめ方。
主要人物の物語が宙に浮いた感じが否めない。
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