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アーシュラ・K・ル=グウィン Ursula K. Le Guin

1929年- 米バークレー生まれ。
父は著名な文化人類学者であるアルフレッド・クローバー(1876-1960)、母は作家のシオドーラ・クローバー(1897-1979)。
ラドクリフ女史大学とコロンビア大学でフランスとイタリアのルネッサンス期文学を専攻。奨学生としてパリ留学中に知り合ったシャルル・A・ル=グウィンと結婚。
当初SF作家として活躍し、両性具有の異星人の政治を描いた「闇の左手」でヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞。
ユートピアを描いた「所有せざる人々」など代表作は多いが、児童文学である「ゲド戦記」で世界中の多くの読者を獲得した。
主な著書:闇の左手、所有せざる人々、言の葉の樹、風の十二方位、ゲド戦記 他多数
参考サイト:http://www.ursulakleguin.com/

闇の左手 | なつかしく謎めいて |
ゲド戦記
影との戦い | こわれた腕環 | さいはての島へ | 帰還 | アースシーの風 | ゲド戦記外伝 |
ナルニア国ものがたり  
空飛び猫 | 帰ってきた空飛び猫 | 素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち | 空を駆けるジェーン |

 影との戦い  ―ゲド戦記1 おすすめ

A Wizard of Earthsea : Earth Sea
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A Wizard of Earthsea

 多くの魔法使いを輩出したゴント島に生まれたゲド。ある時村に侵入した外敵を水際で計らずに魔法でくい止めることが出来た。その類稀な天賦の才を大魔法使いオジオンに見いだされ、彼のもとへ弟子入りをする。しかしオジオンの教えに満足できず、より大きな力を求めてアースシーの智の象徴ロークへと向かう。
 ロークで己の力を競い合う学友の挑発に乗り、自らの力を奢るあまり「影」を放つ。「影」を退ける方策も無くただ怯えるゲドだったが、悩み抜いた末オジオンに救いを求め、故郷に戻る。そしてオジオンの助言により、「影」との長い戦いが始まる。

後悔と呵責に傷つきながらも自らを脅かすものに向かい合ったことで自己認知して行く姿を描いたシリーズ1作目。
 シリーズを通し、普遍的な哲学的テーマを扱った名著です。
多島海世界、アースシーが舞台。
この世界では魔法が当たり前のように存在する。そして魔法を用いるには、存在するそのものが持つ古からの「真の名」が重要な意味を持つ。
児童書だとか、フェミニズムの産物だとか、簡単に語る無かれ。
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  • 清水 真砂子 訳
  • 岩波書店
  • 発行:
  • ISBN

 こわれた腕環 ―ゲド戦記2

The Tombs of Atuan 



物語コレクション

The Tombs of Atuan
 舞台はカルガド帝国に移る。ここでの主人公アルハはガルガド帝国の聖地・アチュアンの墓所に祀られている太古の名なき精霊達に仕える最高位の大巫女。彼女は幼い頃親元から引き離され、闇の巫女として生きてきた。アルハが17歳になったある日、世界に平和をもたらす「エレス・アクベの腕環」の片割れを求めて墓所の地下迷宮に一人の魔法使いが侵入した。誰あろうゲドである。この腕環は二つの破片が合わさったとき世界に平和をもたらすと言われる。いま1つゲドが持っている腕環は「闇の戦い」の旅の最中に孤島で偶然出逢った王家の末裔である老人から貰ったものだった。
 自らの世界に突然出現したゲドにアルハは恐怖を抱くものの、置かれた境遇と自分のあり方について自問自答を繰り返しながら、疑心無く彼女を受け入れるゲドに歩み寄って行く。

 若く驕り高ぶったゲド少年が闇との戦いを通して心を鍛えられ、静穏で求道的な青年魔法使いとなって登場する。
 第2の主人公、アルハという若くして権力を手にした少女のアイデンティティーの再構築を扱った物語。
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  • 清水 真砂子 訳
  • 岩波書店

 さいはての島へ ―ゲド戦記3 おすすめ

The Farthest Shore
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物語コレクション

The Farthest Shore

 帰 還 ―ゲド戦記 最後の書

Tehanu
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物語コレクション

Tehanu
かつてのアチュアンの大巫女テナーは農夫に嫁ぎ、普通の女としての幸せに生きていた。その夫も3年前に先立ち、夫の農園を切り盛りする毎日。
 彼女は、親に虐待され、炎に焼かれた少女テルーを助け、養女として迎える。テルーの幸福を心から願い、将来の生きる糧となるものを探すテナー。
 そんな折、アチュアンを出て以来親代わりとなって面倒を見てくれたオジオン危篤の知らせが入る。すぐに身支度をすませオジオンの家へと向かうテナーとテルーであったが、オジオンは静かに息を引き取る。今際オジオンは「テルーに全てを教えろ、ロークでは駄目だ」そして「待ってごらん」とテナーに語った。
 その言葉通りオジオンの家にとどまるテナーの元に、さいはての島から竜に乗って持てる全てを使い果たしたゲドが帰って来る。
 再会を喜ぶのも束の間、魔法の力を失ったことに苦悩するゲド。それをテナーは懸命に支えた。テナーの生きる力に支えられ、肩書きのないただ一人の男としてゲドは自らを受容していく。  3人はオジオンの家で穏やかに生活していく。しかし、欲望と権力だけを糧にして生きていくものたちに翻弄され、3人は危機的状態に陥って行く。だが…。

ゲド戦記は読書対象年齢が小学高学年~中学になっているが、これは3巻までに限ったこと。
この4作目のベースに流れる絶望と虚無、老いと受容、そして理不尽な現実は、ある程度大人にならないと不快であろうし、中年の男女の機微など理解出来ない部分が多いのでは?と思うのだが。
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 アースシーの風 ―ゲド戦記Ⅴ  おすすめ

The Other Wind
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物語コレクション

The Other Wind

 ゲドのもとに悪夢に悩まされるまじない師・ハンノキが訪れる。ゲドは彼の夢の話を聞き、ハブナーへ行くことを勧める。
 折しもその頃、竜達の不穏な動きの対策に窮し、レバンネンはテナーとテハヌーを呼び寄せていた。

 アースシーには大きな変化の波が押し寄せて来ていた。
 竜の行動の謎を解くカギとなるのは、ロークの魔法使いではなく、カレシンの娘テハヌー。
 そして、次世代を担う若き王レバンネンの許には政略によって言葉もわからぬ国の妃となるべく送りつけられたカルガドの王女セセラクがいた。その彼女に向き合おうとはしないレバンネン。
 若い彼らがそれぞれの新しい状況に戸惑いながらも、大きな未来に向けて一歩を踏み出す。

変わり行く世界の謎を解くべくアースシーに生きる次世代たちの物語。
かつて1つの世代を作って来た二人…旧き権力の象徴・アチュアンの大巫女から腕輪とともに平和をもたらしたテナー、そしてローク大賢人であったゲドの許へ還って行く。
畑仕事をする清貧の帰る道すがら、我々も物語を通して幾度も登った坂を思い出と未来を思いながら歩くテナーの目線で歩く。
単なる一世代一英雄の叙事詩的物語でなく、時と世界を牽引していく生の営みそのものの美しい物語がここに完結。
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  • 中村 妙子 訳
  • 出版: 原 書房
  • 発行: 
  • ISBN: 
  • 単行本:

 ゲド戦記外伝 おすすめ

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Tales from Earthsea
「アースシーの風」より1年強。
 早川書房から「伝説は永遠に」で一部邦訳が掲載されていたが、念願の清水真砂子訳を読むため待ち続けた。

 外伝や追補の性格上、あらすじや各作品について説明することはしない。
 アースシー世界をゲドを伴い書き始めたル=グウィンの作品への情熱と作家としての変遷が書かれている「まえがき」から始まり、ロークの魔法学院が設立経緯を示す物語「カワウソ」、ゲドの師オジオンの若き日とその師ダルスのエピソード「地の骨」、大賢人となってロークに居た頃のゲドの手がけた仕事のひとつを扱った「湿原で」等、
都合5編の物語とアースシーの言語や社会、歴史についての「アースシー解説」が掲載(アースシーの歴史と伝説・社会などが描かれている)。

 ゲド本人が登場する「湿原で」は勿論のこと、本編とは全く関わりの無い物語であっても、目に浮かぶ風景の中に少年~壮年までゲドの姿が見え隠れする。
特に「地の骨」はオジオンと、その師ダルスの物語であるにも関わらず、背後にいつもゲドの姿が存在する。連綿と続く師と徒弟の関係。ひとつの終わりがあっても受け継ぐことによって生き続ける。
 そして、「湿原で」は敗北と挫折、仮にそれが自業自得であっても、人は善くあらんと欲したその時から、既に救われ安らぎを得ることが出来る。決して宗教などに拠ることなく、現実世界の中でそれを得ることが可能であることをル=グウィンは示す。

 本書を読むことによって、本編の流れが理解ができるばかりでなく、ル=グウィンの哲学が汲み取れ、まさに彼女の半生をかけてきた作品のまとめとバックグラウンドの紹介という感じである。

 空飛び猫  おすすめ

CATWINGS
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都会のゴミ捨て場で暮らすジェーン・タビー。
 このお母さんから生まれた4匹の子猫には羽があった。
 お母さんはどうしてこの子達には羽が生えているのか不思議だったが、生き抜くために難しいことを考えていられる余裕はない。
 子猫たちにとっても決して住みやすいところではなく、危険がいっぱい。
 ある時大きな犬に追いかけられたちびのハリエットが、ひょいと羽を広げて犬には届かない屋根の上に。
 それを見ていたお母さんはなるほど合点がいった。
 この子たちの羽は自分たちを守るものなんだと。
 丁度お母さんはトム・ジョーンズさんと結婚することが決まったので、安心して兄弟に独立の話を始める。
 4匹の子猫たちは少し寂しい思いはしたが、空を飛んで巣別れするのだった。

 兄弟達は森まで来たが街より安全で暮らしやすいものではなかった。森の生物からの襲撃、餌をとることの難しさ…
 兄弟達は街での暮らしぶりを振り返る。
 母さんが言ってた『よい手を見つけたらお前は餌を探さなくてもいいんだよでもそれがいけない「手」だったら犬よりたちが悪い』
 そんな折、兄弟は心優しいハンクとスーザン兄妹と出会う。
 「きっとあれは良い手だよ」、「きっとあれは良い猫だよ」
 こうして猫と人間の兄妹は距離を縮めて行く。
 そしてすっかり仲良くなった4匹と2人は「この羽ってすごくふわふわしてる」「この手ってすごく優しいのね」とそれぞれ呟く。

ル=グウィンも猫好きだったんだ。
 読んでる端から猫をよく観察していないと気づかないだろう箇所がいくつも出てくる。
 猫好きにはたまらない描写が何度も出てくるが、カワイイだけじゃない。心底優しい気持ちになる。
 村上春樹も大好きな作家の訳をして愉しそうな感じが伝わってくる。
 シンドラーの絵も変に媚びた感じがなくて爽やか。
  • 村上 春樹 訳
  • 講談社
  • 発行:

 帰ってきた空飛び猫おすすめ

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農場の鳩小屋で暮らす4匹の空飛び猫たち。心優しいハンクとスーザン兄妹に匿われて暮らしている。何故匿われてるか…翼のある猫なんて人に知られたら、見せ物にされたり、実験動物にされたり、大変な目に遭うと知っているから。

 ある日ハンクとスーザンが学校に行った後、4匹の空飛び猫兄妹のうち、ジェームスとハリエットが街に残ったお母さんに会いに行こうと決めた。
 雨の中を大変な思いをしながら森を抜け、街の上空に来た時、生まれ育ったゴミ捨て場が何処にも見あたらない。
 見慣れたビルには大きな鉄球がぶつけられている。お母さんを捜すジェームスとハリエットだったが、解体される直前のビルに小さな黒い影を見つけた。
 それは未だ小さくて、そして翼の生えた黒い猫だった。
 黒のちび猫は恐怖から、どう猛になっていたがハリエットの優しい「ゴロゴロ」で距離を縮めていく。
 が、みんながいたビルに突然鉄球が!ジェームズはちびの黒猫の首をくわえ、間一髪で上空に飛び出す。
 このちびの黒猫は、4匹の兄妹たちの一番下の妹だった。
 何とか会えたお母さんは独り暮らしの老婆のペントハウスで、末のちび猫を心配しながら暮らしていた。
 お母さんは再会を懐かしみ、ちび猫の無事を喜び、みんなと一緒に農場で暮らしてほしいと心から願う。ジェームスとハリエットは一番下の妹を連れ、兄妹の許へ帰って行く。

もう堪りません。じーんと来ます。ル=グウィンらしく確かに随所でメッセージ性が仄見えたりするのですが、兎にも角にもあったかくなります。

 素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち

Wonderful Alexander and the Catwings
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アレキサンダーは何一つ不自由のない暮らしをしているファービー猫一家の一番下の暴れん坊。
姉たちはうんざりしていたけれど、お父さんもお母さんもお手伝いさんも、飼い主でさえ『何て元気なんだ!』『犬も怖がらないなんてアレキサンダーは素晴らしい!』と褒め称える。
 アレキサンダーも自分は素晴らしいアレキサンダーなんだと鼻高々。
 高慢ちきなアレキサンダーは、もっと素晴らしいことをしてやろうと冒険の旅に出る。
 が、二匹の猟犬に出会い、気がついた時には高い木の上に登っていた…。
 高い木の上で震えながら一夜を過ごす羽目になったアレキサンダー。必死で助けを求めるが誰も来ない…
 ところがアレキサンダーに向かって真っ直ぐ飛んでくる鳥がいた。声を殺してじっとしていると…
 それは鳥ではなく、翼の生えた黒猫だった!そう、あの兄妹たちの一番下の妹猫だった。

 スーザン (彼女の名前はお母さんの名前を貰ってスーザンという)はしゃべれないが、ゆっくりとアレキサンダーを木の下まで導き、自分たちの家に連れて行く。
 アレキサンダーは考えた。素晴らしいのはスーザンの方じゃないかと。僕もお返しに素晴らしいことをしたい…

ル=グウィンという人は、表現が少々タイトなところがあるけれど、本当に心根の優しい人なんだなと実感する。時代錯誤な雰囲気を感じとろうと思えば感じられるけどこの作家が生きてきた時代と今と、それ程差があるかな?とも思う。
素晴らしいことをしたかったアレキサンダー。助けて貰ったみんなの温かい励ましによって、ネズミが怖くて失語症になったジェーン(猫なのに:笑)が勇気を振り絞って自分の弱さをうち明ける。出来ることや力があることを自慢するより、弱さを認め合うことがずっと難しくて素晴らしいこと。
このお話し、身近な子どもに是非読んであげたい。で、一緒に心から愉しみたい。

 空を駆けるジェーン  

Jane On Her Own

 闇の左手  

contributor
銀の匙

宇宙連合の使者ゲンリ-・アイは、外交関係を結ぶため、両性具有の種族が住む惑星ゲセンに派遣される。連合を信じない人々によって逮捕された彼を救ったのは、王国の宰相エストラーベンだった。二人は危険な氷原へと逃亡するが…。

最初に読んだときは、どこかフェミニズムっぽいところがちょっと…(おらの言うこと、わかってくださいますか?)という印象しかなかったのですが、作者ル=グィンが指輪物語信者と知ってから再読したら、あら不思議。クライマックスの逃避行は「二つの塔」のフロドとサムのよう。二人の間の微妙な関係も、何となく似ているかも…。
  • 小尾 芙佐 訳
  • 早川書房
  • 発行: 1995/03
  • ISBN : 4-15-010252-X
  • 文庫 / 379p

 なつかしく謎めいて

Chaging Planes (1998-2002)
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空港で乗継を待つ間、次元間移動をした「私」の友人のシータ・ドゥリープ。彼女から教えられた方法で「私」も移動を試みる。どうやら同じことをやっている人たちがたくさんいるらしく、旅行者の安全と便宜を図るために次元間旅行局なるものが存在し、その次元の言語の翻訳機まで貸し出ししてくれる。
1篇の導入文と15篇の「私」による旅と次元の記録。
シータ・ドゥリープ式次元間移動法          渡りをする人々
玉蜀黍の髪の女      夜を通る道        海星のような言語
夜を通る道         ヘーニャの王族たち   謎の建築物
アソスの沈黙        四つの悲惨な物語   翼人間の選択
その人たちもここにいる  グレート・ジョイ      不死の人の島
ヴェクシの怒り        眠らない島       しっちゃかめっちゃか

原題は"Changing Planes"。planeには次元と飛行機の意味がある。
うんざりする飛行機での移動と乗り継ぎ待ち時間の間、座席に座りながら空想の世界にトリップする…時々誰しもやることではないだろうか。ル=グウィンもそんな退屈と辟易した時間の中で創ったのかも知れない。

余所からの資本によって人工的に作られた、まるでテーマパークのような国、図書館での文献や住民への聞き取りを元にしたその次元の神話や伝承であったり、まるで本物の比較文化のフィールド調査の趣がある。
1篇が短く、さらりとした文章はランチのお供…という風に気軽に読めてしまうが、そこはル=グウィン。全くの異世界の話が、いつの間にか我々の世界の裏側、あるいは未来を覗かせられていることに気付く。

各篇の原タイトルの記載がほしいところだ。
  • 谷垣 暁美 訳
  • 発行: 河出書房新社 
  • 2005/11/30初版
  • ISBN: 4-309-20450-3
  • 短編集 新書版