© Fantasia Lab. All Rights Reserved.
<<Back

ケン・グリムウッド Ken Grimwood

リプレイ |


 リプレイ

Replay
rate-5
contributor
Leon

1:06 PM, 88.10.18

ニューヨークのラジオ局にニュースディレクターとして勤めるジェフは、自分のデスクにあるデジタル時計を見ながら突然の心臓発作で死んだ。

享年43才

いや、死んだはずだったのだが、意識が戻ると周囲の様子が一変して母校の寮に居る。

場所だけではない。

彼が今居るのは、1963年のエモリー大学の学生寮であり、体も18才の彼のもの。

始めのうちは戸惑いを隠せないジェフだったが、彼の「未来の知識」をもってすれば、この人生のリプレイを如何に有意義に生きることが出来るかに気付く。

ジェフは手始めとして1963年のケンタッキー・ダービーを制するはずの穴馬シャトーゲイへ、手持ちの金を全て注ぎ込むのだが・・・

未来の知識を活かして過去の時代を謳歌するという幻想は珍しくないと思うが、予想に違わずジェフも賭け事や投資で一財産を築き上げて行くものの、再びその日を迎えることになる。

1:06 PM, 88.10.18

ジェフは再び心臓発作によって死に、再び1963年に18才として蘇る。



人生をやり直すという幸運に恵まれたかに見えた彼が、同じサイクルを幾度も繰り返す様子を読むうちに、それが呪いであるかのように思えてくるから不思議だ。

この人生の繰り返しをジェフは「リプレイ」と呼ぶのだが、それが何故起きるのかということについては沢山の推測が立てられるものの、明確にはされない。

また、ジェフがリプレイから得た人生の生き方に関する教訓を考えれば、明確にされる必要もないのだろう。

小説の効果として「疑似体験」というものがあるが、本作は”限りある”と形容される人生そのものを、それも何度も疑似体験させてくれる。

巨額の私財を成したり、異性や麻薬に耽ったり、果ては世捨て人として山奥に隠遁するジェフの、人生のサイクル毎に異なるアプローチは確かな現実味があり、その全てを体験した彼が得た、自分の人生は自分のものであるという教訓には充分に説得力がある。

説得力が感じられる理由は、ジャーナリスト出身の著者の映し身と言える主人公が、積極的に関わろうとする実際の歴史的な事件の存在による部分もあるようだ。

余談になるが、当初は繰り返しによって永遠に生きると思われた主人公だが、リプレイの期間が幾何級数的に短くなっていることに気付く。

最終的には、リプレイの開始から固定された寿命までが数分、数秒という単位になってしまい、「永遠の生」が「頻繁な死」にとって変わる下りでは背筋が寒くなった。