物語は神話「アローンの書」から始まる。
世界はかつて7兄弟神によって創出された。民はそれぞれ慕う神によって分かれ、それぞれの国家を形成していくが、長兄の神アルダーだけは民を持たなかった。
アルダーは大いなる力を持つ<珠>を創る。その珠に魅せられた美貌の神トラクは我が物にせんと欲し、他の兄弟神とそれぞれの民を巻き込んで戦いを起こす。
トラクは戦いに敗れ、醜悪な容姿と憎悪の権化と成り果て、神々は<珠>を人間に託すことになる。
時は何世紀も過ぎ…
両親を知らないガリオンはポルという名の口うるさいが愛情深い伯母と一緒にセンダリア国の農園で暮らしている。
時折やってくる語り部の老人ウルフの物語に耳を傾ける程度が愉しみな謹厳実直なセンダー人に囲まれ、平凡に暮らしていた。
しかし、彼の人生はある日を境に一変する。
彼の故郷である農園を離れ、友人と別れ、大人たちと旅が始まる。その旅はガリオンの意思とは無関係に世界の存亡に関わる出来事が隠されていた。
与り知らぬ<予言>に導かれ、宿命の印を掌に持つガリオンは問い続ける。
僕は一体誰?
80年代初め、ポスト「指輪物語」としてアメリカ国内はもとより世界的に支持されたエピックファンタジーの代表作、「ベルガリアード物語」の1巻。
トールキンの「『指輪物語』に似てる」、「指輪ファンは好きになるか嫌いになるかのどちらかだ」という話を耳にするが、どうだろう?
旅の仲間や、主人公が意図せぬ大事件に巻き込まれ成長(遍歴)していく様、挿入されている些細なエピソードなどにもトールキンの影響を隠そうとしていないが、嫌味がなく爽やか。
むしろ、信仰する神の性格と民族性を強調し、民族のうちに善悪を区別する手法はアメリカ的で少々頂けない。
だが、瑞々しくユーモアと機知に富んだ会話、魅力的な人物、どれもが読んでいてとても愉しく、あっという間に巻が終わる。
再読して判ったが、指輪物語とハリー・ポッターの愉しい部分を併せ持っているという印象がある。
ファンタジーの愉しさがギュッと詰まった作品。2005年に待望の新版が復刊。
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