

- 斉藤 健一 訳
- 沢田 としき 絵
- ポプラ社
- 発行:2003/05上 2003/08下
- ISBN:
4-591-07649-0(上)
4-591-07808-6(下)
- 四六判 / 271p
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アフリカ。未だ人類が狩猟と採集によって生を紡いでいた時代、8つの<最初のものたち>への素朴な信仰と、それに由来する部族に分かれ暮らしていた。
「月のタカ族」はある時、<よそ者>に襲撃される。
僅かに生き残った人々は、新たな<よきところ>へと旅立つが、過酷な環境の中で足手まといになる幼い子供と病人を岩穴に置き去りにすることになる。
だがその夜、弟を置き去りにした少女ノリは<月のタカ>の夢を見る。
夢のお告げを幼なじみのスーズに話し、隊から密かに離れスーズとノリは子どもたちを助けるために引き返す。
スーズをリーダーとしてノリとティヌ、幼いコー、マナ、オータンとともに<よきところ>を目指し、 血族との再会を目指す。
上巻は年かさの少年スーズとノリを中心とした物語スーズとノリを中心とした6人の冒険と成長の物語。
下巻では「月のタカ族」との再会後、コーとマナの視点から他民族との関わり、異文化との摩擦を通し、より精神的な問題や人間の根源的な問題を問いかける。
各章毎に<最初のものたち>にまつわる神話と思しき物語が挿入され、血族の背景や思考への理解を与えてくれている。
原始、人が狩猟と採集によって生きていた時代。舞台はアフリカだが、当時の環境を作者は想像しながら書きすすめていることがよく判る。読者層や作風に甘えることなく丁寧な取材や調査が背景にあることが察せられ、好感が持てる。
人びとは当然裸なのである。煌びやかな建造物や装飾物も一切無い。
しかし、原野と砂漠、火と水、月と灼熱の陽、瑞々しく色とりどりの動植物、闇と青い空…引き締まった肉体とよく動くしなやかな手指…目に浮かぶ情景は、とても美しい。
人がどのようにして生き、集団を維持・存続させてきたか、スーズらの冒険と<最初のものたち>の神話がクロスしながら理解させられていく。
異種族・異文化との遭遇による葛藤、生命の危険に常に晒される過酷な環境の中で規律を守り、智恵を出し合い、血族を守り次へと紡いでいく。
生きることそのものが善である単純な社会であるが、そこには敬愛や礼儀、思いやりと慈悲といった極めて高度な精神活動が存在する。最後の物語では「戦い」がテーマ。仲間を守るためではあるが、人を殺したマナが傷つき悩みながら善悪の意識に人間の証を見出す。
かれらの言語そのものと同様、訥々とした感情表現であることが、こちらの最も柔らかい感情に訴える効果があるように感じる。
スーズやノリたちと一緒に旅をしてきた物語、最後も、そして読後の余韻も未だ一緒に旅をしている。
これほど胸が熱くなった物語もそれ程多くは無い。
2006.07.26読了 
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