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チャールズ・デ・リント Charles de Lint

1951年12月22日 - 。オランダ生まれのカナダのファンタジー作家、ケルト音楽奏者。オランダのブッスムで生まれたが、生後まもなくカナダに移住し、現在はオタワ在住。

リトル・カントリー |


リトル・カントリー

contributor
Leon

リトル・カントリー (上)
リトル・カントリー (上)

リトル・カントリー (下)
リトル・カントリー (下)
ジェーニー・リトルは、伝承音楽の演奏活動で身を立てている。
演奏旅行を終え、久しぶりに祖父の待つコーンウォールの生家へと戻った彼女は、そこで思いがけない発見をする。

祖父トマスの親友でもあったウィリアム・ダンソーンは、ジェーニーの大好きな作家なのだが、寡作で「かくれ住む人々」と「失われた音楽」という2つのファンタジー作品しか世に出ていない。

ジェーニーが祖父の屋根裏部屋で見つけたのは、ダンソーンの知られざる遺作で「リトル・カントリー」と題されており、ダンソーン自身から祖父へ託された限定発行1部のみの希書だった。

その本には、ダンソーンが書いた手紙が挟み込まれており、絶対に公表せず、存在を隠してくれるようにとトマスに頼んでいた。

不思議を感じつつも、ジェーニーは「リトル・カントリー」を読み始めるのだが、読み進めるにつれて、静かなはずのコーンウォールの小さな漁村に異変が起こり始めるのだった・・・

小説内小説である「リトル・カントリー」の主人公は、やはり小さな漁村ボドベリーに住む孤児のジョディ。

ジョディは娼家を営む叔母に引き取られているが、大半の時間を近所に住んでいる発明家デンジルの助手として過ごしている。

ボドベリーには、魔女との噂があるヘドラが住んでおり、彼女が自宅に掌サイズの小人<スモール>を飼っていると聞いたジョディは、好奇心から魔女の家へ忍び込むのだが・・・

本書「リトル・カントリー」と、ダンソーンの「リトル・カントリー」が並行して語られていくのだが、互いの関連性は最後の方にならないと判らないものの、そこに至るまでも個別の面白さが充分にある。

デ・リントのリトル・カントリーの方は、ダンソーンの遺作を狙う秘密結社的な組織が絡んだ現代スリラーの趣きが強く、ダンソーンのリトル・カントリーは、英国の妖精伝説を下敷きにした純粋なファンタジーだ。

この、一見すると無関係な二重構造が1つに重なるカタストロフィーが本書の最大の魅力ではあるが、二つの物語の類似点などを比べているうちに、あれよあれよと読み進めさせる力がある。

「本の中に登場する本」という主題は、エンデの「はてしない物語」やジョナサン・キャロルの「死者の書」にも登場するが、プロットの複雑さなど、作者の力量が必要とされるためか傑作が多いようだ

デ・リントには音楽家としての一面もあるとのことで、演奏の場面がふんだんに登場するが、それらの音楽の譜面が巻末に付けられているのには驚いた。

多くのファンタジーで「言葉」を魔法の基礎としているが、デ・リントはもう一段階踏み込んで「音」こそが魔法の根源だとしている。

準創造世界の作り手としては一風変わったアプローチだが、音楽が物語と並んで古代を伝承する手段であることに気付かされ、充分な説得力があると感じた。

主人公ジェーニーと同様に音楽と本の双方を愛する人々にとって、本書は愛読書の一つに数えられるに違いない。