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● ポール・アンダースン Paul Anderson
折れた魔剣
折れた魔剣 
The Broken Sword (1954)


折れた魔剣

The Broken Sword

デーン人のオルムは、ヴァイキング船を仕立てて故郷のユトランド半島を後にした。
イングランドを荒らし回った末に、その地にあるデーンローに居を構えようと、土地を得るため地主の一家を殺害する。この時、ただ一人逃された一家の母親は、オルムに復讐すべく、彼に呪いをかける。
「オルムの長子が人間世界のかなたで育てられ、いっぽうオルムが将来彼を八ツ裂きにするであろう狼を育てる」──と。

やがてその土地の強力な首長なったオルムは、イングランドの州長の娘イールフリーダと結婚、男子をもうけるが、森の魔女にそそのかされたエルフの大守イムリックが、オルムのこどもをさらい、自分とトロールの女奴隷との間に儲けた子供を代わりに置いてくる。
―― そそのかしたその魔女こそ、オルムに呪いをかけたあの母親であった。

オルムの子として育った取替え子ヴァルガルドは、身の内に滾る凶暴な衝動につき動かされてオルムの一族を皆殺しにし、義理の妹二人をさらって、トロールの戦列に加わるためにトロールハイムを目指す。
一方 オルムの子スカフロクはエルフの国アルフハイムで幸福に育ち、妖精王によってエルフのなかに身を置くことを正式に認められ、エルフの仇敵であるトロール族との戦いに身を投じる。
こうして二人はあいまみえ、スカフロクはオルムの最後に生き残り娘フリーダと出会う。

アサ神族の主神オーディンの思惑動くなか、エルフとトロールの戦いを背景に、スカフロクとヴァルガルドは更なる悲劇に向かって突き進んでいく。


タイトルの「折れた魔剣」とは、オーディンがスカフロクに与えた「テュルフィング」という名の剣のことで、オーディンはこれを再び鍛え直して、アサ神族の敵である巨人族と通じているトロールを駆逐するのに使わせようとした。この剣は、いったん抜いたら相手を殺さずには済まないという魔剣。

スカフロクとヴァルガルド…刺違えることになった二人は、本来存在すべき場所に存在できなかったために悲劇に見舞われていく。スカフロクの代わりとしての生きる己の価値と存在に苦しむヴァルガルド。
幸福なエルフの世界に住まいながら温かな血のぬくもりを求めて禁断の契りを結ぶスカフロク。
神々の戦いや運命に翻弄されながら、最終的にアンハッピーであっても己の居場所と幸福を求める姿はツボ中のツボ。神話をモチーフにする物語の王道。

エルフとトロールの戦では、バイカルのデモン族、中国のシェン族などに加えて、日本の鬼も刀を持って参戦。思わずにんまりしてしまう。

1954年と言う年は、奇しくも海を隔て「指輪物語」が上梓された年である。2作品とも北欧神話や「ニーベルングの指環」の影響が伺え、むしろ「シルマリルの物語」に挿入されているエピソードに近似するものが存在する。比較しながら読めたのは2度美味しかった。

因みに後発のスーザン・プライスの「エルフ・ギフト」と比較させることも多いが北欧神話を題材にしているというだけで、勘弁してくださいというほど別物。

  • 関口 幸男 訳
  • 早川書房
  • 発行:1974/07
  • ISBN : 4-15-011519-2
  • 文庫 / 445 p
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